「ほう、またやってきたのか?」
あれから一月も経たずに、アルスは再び闘技場にやってきていた。
同じく出迎える、青い鎧の戦士。
「レベルは上がったのか?」
「……」
アルスは答えない。
「沈黙が返事か、まあ戦えばわかることだな」
戦士が右手を掲げると、先日の魔王たちが現れた。
「今度のオッズは、20.5倍対5倍だ。ここの観客は目が肥えてるからな」
戦士が笑うと、アルスも微笑み返した。
(いい顔だ。だがこの短期間でひっくりかえせるほど、甘くはないぞ)
戦士はそれは言葉にせずに、後は舞台の役者たちに任せた。
「さてと……」
アルスは前回とは違い補助呪文は唱えずに、攻撃をすり抜けて両手剣の魔王の目の前に移動し、強制睡眠呪文を唱えた。
たやすく眠りに落ちる魔王。
残りの2体に向き直ると、右手を掲げて呪文を詠唱する。
「トリプル・ギガデイィーン」
強大な稲妻のエネルギーが、闘技場を覆う。
観客席からどよめきが起こる。
「たったひとりでギガデイン3発か」
戦士がたゆたって笑う。
稲妻の中で、アルスと魔王たちの剣激の音が聞こえる。
時も経ずに一筋の断末魔が走る。
地響きを立てて倒れるエビルプリ―スト。
残った魔人との一騎打ちの中で、アルスは観客席のマジックパワーを集めてとてつもなく巨大なミナデインを放った。
最強の魔人もその威力の前に倒れ落ちる。
残された一体が、ようやく眠りから覚めて、アルスにその刃を振り下ろした。
「勝負アリだな」
戦士はそうつぶやくと、唇の端を曲げて、微笑んだ。
「勝者、アルス選手です。なんと20倍の大穴です。勝ち券をお持ちの方は、換金所にてお引き換えくださいませー」
見世物の終わった会場を後にする異世界のお客達。
立ちすくむアルスに男から拍手が送られる。
「見事だな。勇者の血を引く者よ」
「……あなたが次の相手か?」
「急くな急くな。まず聞かせてくれ、何ゆえ未だ更なる強さを求めるのか」
「……」
「ふふ、また沈黙か? ならこれならどうだ? まださらに強くなりたいのか?」
戦士を見つめてうなづくアルス。
「よしよし、いい目だ。それなら武術大会を開いてやる」
「武術大会?」
「こんな金儲けの見世物ではなく、名誉を奪い合う腕比べだ」
「そうだな、今度イシスで行われる格闘大会に参加しろ。様々な世界からそれなりの強者を集めてやる。お前の知り合いも来るかもしれないな」
「知り合い?」
「楽しみにしているぞ」
戦士はそういい残して姿を消した。
「武術大会……」