「ケホッ」
「なにをやっても無駄だ。経験が違う」
「おにいさん強いねえ。まるっきりモンスターみたいだ」
「なんだと」
「だって」
「この俺を捕まえてモンスターとは、よく言ったもんだ。今すぐトドメをくれてやる」
テリーはデュランに教えてもらった遊びを放ってきた。
「まるっきりモンスターじゃん」
「クスクス」
「なっ?」
(くそっ。こんな屈辱は2度目だ。せっかく究めた技の数々が……)
「今度は僕の番だよ」
テンは右手を掲げると、自分の最も得意な呪文を唱えた。
「らあいでぃぃーん」
バリバリ
テリーの体に稲妻が走る。
「きゃあー」
「カッコイイー」
「ふん、たかが中級魔法じゃないか」
「続いて、ぎがでぃいーん」
「ぐおお」
レベル99を大きく越えるテリーでもこたえる程の電撃が闘技場を包む。
「よーし」
天空の剣の切っ先を雷の中の人影に密かに向ける。
「これで、終わりだ!」
ガキイン
テンの両の手に金属の感触が走る。
「くっくっく、この俺にこの伝説の武器を使わせるとはやるじゃあないか」
テリーの右手には、黄金色に輝く、オリハルコン製の牙が握られていた。
神秘の鎧がわずかにテリーの体を癒す。
ア「オリハルコン」
キ「伝説の金属か」
「ぎゃっはっはっは」
「ますますモンスターじみてきたな」
「口にくわえればもっと強いんじゃねえかニイチャン」
観客席から歓声があがる。
「うるさい観客共だ」
戦士はバイキルトを唱えると、オリハルコンの牙で、テンの喉元を再び狙う。
天空の盾で受け止めるテン。
「! 欠けた?」
盾の破片がわずかにこぼれる。
「これで、終わりだああああ」
テンの胸元で、もう一度エネルギーが収束して爆発する。
ビックバン
この宇宙が出来たときと同じ大きさの爆発がふたりの間で弾ける。
吹き飛ばされるテン。
「ああっと。すさまじい技によって吹き飛ばされたテン選手。もはや立つことはかなわないでしょうか?」
テリーは自分の勝利をまだ確信できずに、オリハルコンの牙を握って構える。
見ると、オリハルコンの牙に一筋のひびが走っていた。
「な!?」
「伝説の装備に負けたのか? あの一瞬ヤツの剣が一筋走ったのは確かに見えたが、わずかにかわしたはずなのに。これが勇者の装備か。勇者の血か……」
更にひびが広がろうとするオリハルコン製の牙を見つめる。
テンは再び立ち上がって、天空の剣を構えて、テリーにいきりたって向かってきた。
「まいった」
「え!?」
「俺の負けだ」
「おっーと、テリー選手降参です。勝者テン選手」
カンカンカンカーン
「どうして? まだ戦えたはずなのに……」
テンは青い閃光の背中をただ見送った。