「頼りたくないんだ」
「!?」
「昔聞いたんだ。剣王の里は呪われたサーバインって剣士に滅ぼされたって」
「サーバイン!」
「呪いの力は強いかもしれない。でももっと強い力があるなら、俺は幻魔剣なんかに頼らなくたって、俺の力でもっと強くなって見せる」
「しかし幻魔剣を覚えないなら、ここでは負けだ」
「……!」
プロキスの口が笑う。
「モシャス」
「な!?」
プロキスはキラそっくりになってしまった。
「あれ……」
「黒い戦士がふたり」
「おまえ……」
キラの姿になったプロキスは呪われた隼の剣を自由に振るう。
「剣王爆斬剣!」
体を丸めて、キラの奥義まで使う。
「くっ」
自らの究めた技に翻弄されるキラ。
モシャスを解くプロキス。
頬の傷も消えている。
「なるほど。それがおまえの道か」
魔法戦士として、幻魔剣士とは別の道を歩もうとする若い戦士に、眩しい光を感じる。
「でも、今回だけは、勝ちは譲れねえんだ」
「マヒャド」
プロキスの呪文をかわして接近戦に持ち込むキラ。
体格の良さを生かして、当身でプロキスを倒す。
「勝負アリだっ」
ドラゴンシールドを弾き飛ばして、剣を振り下ろす。
ドラゴンスレイヤーでかろうじて受け止めるプロキス。
「力勝負ならキラの勝ちだな」
「決着ね」
追い詰められたプロキスは、自分の負けを悟りつつも一生懸命考えを巡らせた。
(なにか、ないかなにか。この状況で、なにか使える技か特技か、とっておきの裏技は……)
だがどう考えても良い方法が浮かばなかった。
「ちくしょうっ」
負けを宣言しようとしたその一瞬プロキスの頭にひとつだけ、切り札が残されていることに気がついた。
勝てないかもれない、でもこのままなら負けてしまうんだ。ならいちかばちか……
プロキスは覚悟を決めて、自身の最後の切り札を放った。
「パ、パ、パルプンテー!!」
プロキスが追い詰められて唱えたのはなんとパルプンテ。
術者自身もなにが起こるかわからない呪文に会場もビックリ。
さて一体……
「な!?」
どよめく会場。
戦士が使った呪文は、何が起こるかすら定かではない、天変地異すら引き起こしかねない最高位呪文。
「あの馬鹿。そこまで勝ちに執着しなくても」
「いえ」
「ヤオさん?」
「勝てる目が少しでもあるなら、少しでも勝算があるなら、それに賭けるのは正しいことだわ」
「闘技場はこれ以上ない結界に覆われてる。万が一なにかがあっても大量の回復アイテムに、強者の集まったこの会場。一生に一度使う機会があるかどうかの呪文をもし使うなら、今はこれ以上ないくらい理想的な状況さ。そこまで考えてんだろう」
「プロキス……」
「まあ、なにも起こらないことも多い呪文だから大丈夫さ」
会場には暗雲が立ち込め、おどろおどろしい雰囲気になってきた。
いっそうどよめく会場。
「なにも起こりそうもない雰囲気じゃないわね」
わっはっはっはっはっはっはー
「なんだ?」
笑いながら山のように大きな魔人が現れた。
わっはっはっはっはっはっはー
「ちょっとポロン。あれどうなるの? 私達も混じってなんとかしないとまずいんじゃない?」
「ああ、まあ、アレなら大丈夫さ」
「大丈夫って……」
「まだまともなほうさ」
「え? あれで?」
「やった。これで俺の勝ちだっ」
何十メートルもの魔人は狂ったように笑いながら組み合うふたりを踏みつけてきた。
プチッ
「あ……」
「ふたりとも潰されちゃった」
ぬ、ぬおおおおおおお
「あ、」
「俺は絶対に、アルスのヤツと、戦うんだあーっ!」
山のような魔人の足を持ち上げるキラ。
プロキスのほうは自分の呼び出した魔人につぶされたまま。
わっはっはっはっはっはっはー
魔人は笑いながら去っていった。
「勝者キラ選手っ」