「まいったなあ」

 頭を掻くアブサン。

「こいつは使いたくなかったんだが」

 そういって取り出したのは、丸い球体のもの。

 

「よっと」

 放り投げられたそれはたちまち空中に広がり……

 

ポ「まだらくもいと!?」

 

ロ「くっ、なんだ?」

 ローレの体を絡め取った。

 もがくローレ。

 

「アイツにもらったのは卑怯なアイテムばかりだな」

 アブサンはおかしな形の瓶を取り出し中の液体を飲み干す。

 

「これで、攻撃力が2倍だ」

 膨れ上がった筋肉が、アイテムの効果を説明する。

 

「悪く思わないでくれな」

 

 もう一度更にゆっくりと高く振り上げた戦斧を、今度は全力で振り下ろした。

 

「魔人斬り」

「!!」

 

「ローレ」

 

ィィィン

 

予想外に澄んだ音を響かせてふたりの動きが静止した。

 

ローレはまだらくも糸の中から、自身の剣の切っ先だけを突き出し斧の刃に突きたて、その動きを止めていた。

 

パキパキぱき

 

真っ二つに裂かれて砕ける戦斧。

 

まだらくもいとを手で振りほどいて、男の前に立つローレ。

 

「くっ、う、うおおおおお」

 

 武器を失ってなりふり構わずにつかみかかるアブサン。

 ローレは剣を手から離すと、それを真正面から迎えうける。

 

 両者が舞台中央で手を組する形になった。

 

ポ「なんでだ? もう勝ってたのに、わざわざ力勝負に乗っていったぜ」

プ「それもバイキルト状態の相手にですよ」

 

ア「ぐぬぬぬ……」

ロ「ぐおおおおお」

 全力で押し合うふたり。

 

アル「それでも、勝てる自信があるんだろう」

 

「うおおおおおお」

「!」

 

 アブサンの手のほうからメキメキと骨のきしむ音が聞こえてきた。

 

「くおっ」

 苦悶の顔で、離れるアブサン。

 指が何本か変な形になっている。

 

「ま、まいった」

 自分の手をしばらく見つめ、戦えないと判断したのか、降参するアブサン。

 

「わあー」

 

 仲間のふたりから歓声があがる。

 

「勝者、ローレ選手っ」

 

 

 

 

 試合後舞台袖……

 

ベ「馬鹿だなあお前は、こんなになるまでやるなんて」

ア「熱くなっちまったんだ」

ベ「適当に手を抜いてやりゃあいいんだ」

 相方のベゼルはなにか言葉を唱えると、アブサンの手を元の形に戻してやった。

ア「さんきゅう」

 確かめるように両の掌を握る。

ベ「もう俺たちは用はねえよ。行こうぜ」

 

 ふたりの旅人はイシスの城門へと足を向かわせた。

 喧騒の残る会場を背中に残して。

 




     


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