「やった」
頬から赤い血がたれる。
「降参しろアルス。幻魔剣を覚えるか、拳王の軟気効を使う以外に傷を塞ぐ方法はねえ。いくら強くなったおまえでもそれは無理な方法だ」
だがキラの言葉とは裏腹に、頬の傷はうっすら小さくなったかと思うと次の時にはかき消えていた。
「!」
(どうして? 幻魔剣を覚えるなんていくらなんでも無理なはず!)
アルスの装備している青い鎧が淡い光を放っている。
「ヒーリング能力!!」
伝説の鎧の力は、幻魔剣の力をもうわまり、アルスの傷を塞いでしまった。
「やれやれ、鎧の力でも負けたなあ」
「ぐるるるる」
自分の生きた鎧をなでる。
「だがそれでも、たやすく道を開けてやるわけにはいかねえんだ」
「うおおおおお」
先ほどと同じ剣劇の幕がきって落とされた。
だが今度はいくらか力任せで、さっきとは違う、重い鈍い音を響かせていた。
ふたりから、血のしぶきが何滴も舞う。
ドシュッ
キラの剣がアルスの右腕を深く突き刺す。
「どうした? アルス。本気で来いよ」
「くっ」
アルスは左腕をキラの顔に当てると呪文を唱えた。
「イオラ」
爆発の呪文がキラを吹き飛ばす。
中級呪文のはずなのにイオナズン級の爆炎を巻き起こして。
アルスとも隼の剣とも距離の離れたキラは体を起こしてアルスに叫んだ。
「どうしてだ? やっと世の中が平和になったんじゃねえか。昔のお前はいつも戦ってても、勝利しても、どこか寂しげで、戦いを楽しんでる感じじゃなかった。せっかくティーエと一緒んなって……そのお前がどうしてこんなに強さを求めるんだ?」
アルスは本当に寂しそうな顔で剣を構えながら、呪文の為の左手を掲げた。
「……マイッタ」
キラはうつむいたまま悲しそうに自分の負けを宣告すると、黙って舞台を降りていった。