「さて、いよいよAシードのおふたりです。公平を無視したようなトーナメント表に驚かれた方もおられるようですが、このおふたりに実力でそれが適切であることを証明していただきましょう。アレス選手と、金髪の謎の剣士さんです。どうぞー」
アナウンスによって舞台に上るふたり。
青い鎧と、赤い羽根飾りをあしらった兜。太く白い大剣をだずさえて現れたアレスと、黒いマントを羽織って、その体に不釣合いなくらい、アレスよりも大きないびつな大剣を背中にたずさえて進み出た男。解説の通り、金色のツンツンした髪型をしていた。
アレスが不敵に笑って男に話しかける。
「探していた物は見つかったか?」
「……」
「あちこちの世界を渡り歩いているようだが、死んでしまった者はどうやっても生き返らない」
「……」
「残り香や、魂の欠片、思い出を求めても空しいだけだ。それよりも今、傍にあるモノを守ったほうが良くはないか?」
キ「何の話をしてるんだ?」
「……ココに来れば、俺が探しているものを見つける方法を教えてやると言ったのはアンタだ」
暗く重い声で答える金髪のツンツン頭。
「ああ、そうだったな。ただそれは、勝ったらの話だ」
「……もう終わりにしたいんだ」
大剣を自らの眼前に構える男。
「終わりは存在しない。始まりがいつもあるだけだ」
アレスも剣を抜く。
シ「この人達……」
ヤ「強いわ」
アルスは黙して、ふたりの剣士を見据えていた。
「では、はじめてくださいっ」
審判の声にも何の反応もなく微動だにしないふたり。
ただ、観客からも誰からも、なんの声も上がらなかった。
しかし、ふたりの間の空気が、ピンと張り詰められていることが感じられた。
一瞬の間に、なにかが起こりそうなそんな空気。
その奇妙な静寂のまま、長い時間が流れる。
……時が流れるのを忘れていたような間の後、動き出したのは金髪の黒い男だった。
大剣を頭上高く振り上げると、迷うことなくアレスに振り下ろす。
アレスも、迷うことなくよけようとはしない。
「超」
男は空で、なにかを叫んだ。
「究・武・神・覇・斬!!!」
男のどうみても重い大剣がアレスに向けて振り下ろされる。
一撃を受け止めるアレスに、続けて、何度も刃が襲い掛かる。
最早常人の動きではなかった。受け止めるアレスのほうも……
シ「15回……?」
ヤ「いえ……19」
ポ「そんなに? あの瞬間に?」
プ「でも……」
キ「全部受けきった」
アルスは、ただまっすぐな瞳で、その様子を見ていた。
アレスは金髪の戦士の最後の一撃を受け止めたまま、またも不敵に笑う。
「そんなものか? お前の思いの重さは」
アレスは挑発しているようだ。
「……ただの挨拶代わりだ」
「真の力を見せてみろ。出し惜しみする余裕など、お前には全く存在しないぞ」
「そのようだな」
剣を水平に構えた剣士は、次の一撃の為に構えをとった。
剣士の体が空に浮かび上がると、スピードを上げてアレスの周りを回り始めた。
なおもスピードが上がる。
「……」
水平になぎ払う大剣がアレスに襲い掛かるも、アレスはそれすら見切って眼前で受け止める。
お互いの剣の鍔をあわせたまま見合うふたり。
「剣に全てを賭けるか、それもいいだろう。だがまだまだ未熟なり」
アレスが払いのけると、剣士はふわりと地に舞い降りて、唇を噛む。
「お前には魔法の才もあったはずだ」
またも挑発めいた言葉を投げかけるアレス。
「…………いいだろう。誘いに乗ってやる」
剣士は大剣を背に収めると、印を結び始めた。