プ「呪文か?」
ポ「でも、みたことねえ唱え方だ」
シ「賢者様でも?」
金髪の戦士が、不似合いな、いくらか複雑な印を結ぶとあたりに暗雲が立ち込めた。
「なんだ?」
ポロンの目が大きく見開く。
ポ「召喚魔法!!?」
暗雲の中から巨大な竜は姿を現した。
「竜王を呼び出したか」
巨大なドラゴンは、天よりも高く舞い上がると、その口にエネルギーを集め始めた。
「隙だらけだな……」
竜を見上げたまま、剣を携えるアレス。
(あの竜を墜とす気?)
ヤオの懸念をよそに、漆黒の戦士は自らもマジックパワーを集める。
「フレアー」
アレスの体の中心に、光と熱のエネルギーが集まる。
プ「なんだ、あれ? メラゾーマよりも強くて、熱い?」
アレスはその盾で、そのエネルギーを全て吸収するようにかき消してしまった。
「隙のあるのはどっちかな?」
戦士はそう呟いて、アレスから離れる。
「……」
アレスは、無表情のまま、焦げた盾を見ていた。
テ・ラ・フ・レ・ア
天空の竜は、集めたエネルギーを一筋の光の柱にして、地上のアレスに降り注いだ。
「なりふりかまわずってところだな。だがそれでいい」
アレスはそう呟いて、その光の柱の中に、我が身をまかせた。
呆然と見つめる観客達。
キ「もはや人間のたたかいじゃねえな」
アレスは……
そのエネルギーの中で、ただ立っていた。
鎧は黒く焦げ付いたものの、アレス自体はなんのダメージもなく、少しもたじろぎもせず、そのエネルギーを受け止めたようだった。
ア「強い」
ポ「あれ? アイツは?」
プ「あそこっ」
ドラゴンを召喚した戦士は、それが通用しないことがわかっていたかのように、次の準備を始めていた。
その黒い大剣が、十数本にも別れ、アレスの周りに浮かんでいた。
戦士は、さっきよりも速く、まるで音速のように、剣を蹴って、アレスの周りを飛び、何激もの剣刃をアレスにぶつけていた。
「くらえっ」
最後の一振りを、アレスの赤い羽根飾りのついた兜に、振り下ろす。
金属音が鳴り響く。
アレスの額からは、一筋の血が垂れる。
「決着が着いたのか?」
「着いたな」
一撃を入れたはずの、戦士のほうが、信じられないといった表情を浮かべていた。
「見事だ。腕を上げたな。お前の強さは上出来なほうだ、だが」
額を拭う。
「かすり傷がやっとだな」
アレスは、自分の白い刃を振るうと、光の筋が長く丸く、一瞬走り、剣士の大剣を弾き飛ばした。
その剣は力を無くして、闘技場の隅まで滑っていった。
剣を喉元寸前に突き立てるアレス。
「お前の力は、この程度だ。****」
名前を呼ばれた、戦士はたた地面を見つめていた。
「勝者アレス選手っ」
審判の声で試合の幕は閉じた。
「さあ、天空の勇者よ、ロトの子孫よ。戦い合って、勝ち上がって来い」
脇に控えて戦いを見ていた若いふたりに言葉を飛ばす。
「う〜〜ん、強い、強すぎる。でも」
拳を握るテン。
「僕の力も、もっともっともっと上を目指せるはずだ」
自分の秘められた力を知っているかのような、幼い戦士。
ポ「おいおい、アルス。あれはちょっと人間じゃないぜ」
心配そうな、武闘家の女性ふたり。
プ「呪文だって、使えそうなのにまだ手の内を隠したまま……」
アルスは黙って立ち上がると、舞台に向かった。
キ「心配ねえって。アルスを見ろよ」
アルスは、さっきの戦いに緊張するでもなく、怖気づくでもなく、ただ次の相手の幼い勇者を見ていた。
アルスは無表情で、真面目な顔をしていたが、内心こう思っていた。
(本当の本気で、戦えるかもしれない……)
それは喜びと期待に満ちた胸の内だった。