「ここは……」
「異世界へ続く旅の扉の超空間だ」
「どうして僕はこんなところに?」
「一緒に行かないか?」
「え?」
「更なる強さを求める旅へだ」
「世の中は広すぎる。俺だってまだ駆け出しの若輩者ってとこだ。この扉の先にはもっと強い相手やモンスターがわんさといるかもしれない」
「あなたはどうしてそんなに強さを……」
「俺は軍神だからな。戦うことに取りつかれているのさ。剣で相手を斬る事。力で相手を組み伏せることでしか生きることをみいだせなくなっちまったのさ」
「もしかして、あなたもロトの血をひく者?」
「昔は人間だったからな。子孫か先祖だったこともあったかもな」
「……アレルを知っているんですか?」
「ああ、アイツは俺よりずっと先へ行ってやがる。癪にさわることに戦いとは別の力でな」
「戦いとは別の力……」
「どうする? お前は?」
はにかんだ笑顔で答える。
「僕は元の世界へ帰るよ」
「強さが欲しいんじゃなかったのか?」
「僕が欲しかったのは、皆と幸せに暮らす力だよ。でも、どうすればみんなが幸せになるかわからなかったんだ。だから僕が持っている一番強い力。今まで使ってきた力を強くしようと思ったんだ」
「なら……」
「でもそれは僕が弱いから強さを求めたんだ。どうすればいいかわからないから、戦う強さを。でも、キラ達を見てわかったんだ。一番強い力っていうのは……」
「なんだ?」
「愛の力だって」
「ありきたりだな」
「でもひとは結局そこにたどり着いてしまう。だから大勢の人が物語や歌や踊りにもしてるんだ」
「愛すべきひともいるのか?」
「うん」
「ちっ」
アルスを苦々しく、しかしうっすらと眩しそうな目で見つめる。
ならしょうがない。俺に勝ったやつと行きたかったんだが、テンかローレかクラウドでも誘うことにするか」
横を向くアレス。
「じゃあ」
「帰るならこっちの扉だ」
「ありがとうございます」
「お前はお前の強さを求めるんだな。俺も俺の強さを求める。いつか交わる時もあるかもしれない。その時また な」
「はい」
「おっと優勝の賞品だ」
投げてよこされたのは紋章。
見慣れた、あのロトの印。
「どうしてこれが、ここに」
「異世界にただよってたのを拾っただけさ。欲しい物ではあるだろ?」
「はい。ありがとうございます」
「ん」
「それじゃあ」
「ああ」
アルスの体は青い光に包まれると、元の地上へと運ばれた。
木造の家の扉を開けるとティーエが出迎えてくれた。
「おかえりーアルス」
「ただいま」
「ちょうど黒焦げパンが出来たところよ」
お皿を片手に、焦げ付いた匂いが漂う。
「黒焦げ?」
「こんがり黒パンを作ってたんだけど、雷と嵐が一緒に落ちてきて……」
「焦がしちゃったんだね」
「ごめんなさい」
「いいよ、おいしいよ」
真っ黒なパンをつかんで無理にほおばるアルス。
「やっぱりアルスね。愛してるわ」
アルスの頬に軽く唇をあてるティーエ。
「僕もだよティーエ」
(愛の力って厳しいんだなあ)
苦笑いしながら、愛の味を噛み締めるアルス。
ちょっと苦いからこそ、本当の愛なのかもしれない……
アルスはそう思った。