その夜

なんだか誰かがうなされているのに気付いてティーエは目を覚ました。

「だあれ〜?ポロン?キラァ?」

そう言って気付いたここにはあたしとアルスしかいないのだ。

「う・・・ん。」

アルスは夢をみているようだった。

辛いとき、苦しい時、アルスはよくうなされていたけど、

最近はそれもなくなっていたのに・・・。

「アルス・・・」

「いかないで・・・・・・」

「アルス?あたしはどこにもいかないわ。ずっとアルスと一緒よ。」

「ル・・・」

「え?」

「フ・・・レア・・・」

「・・・・・・」

 

「う・・・ん・・・・・・・・・はっ。」

 

「・・・夢をみてたのか・・・」

まだ暗い宿屋を見て、隣にいるティーエに気付いた。

「ティーエ?」

ティーエは泣いている。

いつも明るく励ましてくれる妖精の泣いている姿に、驚くアルス。

「どうしたの?」

ティーエは泣くばかりで、答えてくれない。

「なにかあったの?」

優しく尋ねる青年に顔をあげるティーエ。

「ゴメンナサイ。」

「え?」

「あたしがこんな服着たから・・・ルナフレアの辛い思い出まで思い出させちゃって・・・」

「そんなの・・・」

「夢をみてたんでしょ・・・」

「え・・・」

「ルナフレアの。」

「・・・さあ、なんだか忘れちゃったなあ。」

昔のアルスみたいに明るい声でとぼける。

「ウソ・・・優しすぎるよ・・・」

「ほんとに覚えてないんだよ。

夢ってそんなものだから。

でも、ルナフレアの夢をみてたんなら、僕は幸せだよ。」

「うなされてたのに・・・」

「悲しい思い出でも、再会できたんなら、きっと僕の本心は喜んでるよ。

もう2度と会えないことより辛いことなんてないからね。」

「・・・・・・」

「ティーエのその服のおかげで思い出せたんだ。

ありがとうティーエ。」

「アルス・・・。」

「僕は異魔神を倒して、世界を平和にして・・・

それで僕の役目は終わったと思ってたんだ。

でも世界は本当に平和にはならなかった。

だからまだ戦っていなきゃっておもったんだけど・・・」

「・・・」

「一度僕は死の世界を覗いて、そこでルナフレアに会ったって言ったでしょ。」

「覚えてるわ。」

「ルナフレアは心のくじけた僕を、受け入れてくれて、この手をとって、一緒にこの世界で暮らしましょうって言ってくれた。」

コクンとうなずくティーエ。

「あの時ぼくにはやることがあったから、その手をつかまなかったけど、

もう今なら、あの手をとってもいいんじゃないかって考えてたんだ。」

黙って聞くティーエ。

「でもその後、アリアハンに帰る時、確かに聞こえたことを思い出したんだ。」

「なんて言ってたの?」

「僕が大人になって恋をして、その人と結ばれて子供を育てて・・・

そして年をとって、いつか僕が僕の世界を離れる時がきたら・・・

その時にまた会いましょうって。」

「・・・じゃあはやくいいヒトを見つけないとね。」

涙の痕を拭うティーエ。

「そうだね。」

「あたし立派な小姑になってみせるからね。」

「それはちょっとイヤかも。」

笑いながらたくさんの昔話をして笑い疲れて眠るふたり。









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