ア「ここは・・・」
テ「雪原のバザー?」
ドワーフやエルフが集まってお祭りを開いているようだ。
テ「なんだか冒険のはじめの頃を思い出すわね。」
ア「うん。」
テ「毎度おなじみ、変化の杖で。」
ア「(ティーエ行きたそうだし、)行ってみようか。」
大勢のドワーフとエルフが集まって賑わっている。
雪原のど真ん中だというのに、草の芽が息吹き、温泉が沸いているそうだ。
テ「どうして雪原の真ん中にこんな・・・」
ア「・・・」
テ「蜃気楼の塔でもあったのかしら。
草木の芽がでて、温泉が沸いて・・・ポロンがいたんじゃないの?」
ア「・・・」
テ「アルスッ。見て。
あそこで拳闘をやってるって。まるであの時みたい。」
ア「そういえばそんな事もあったね。」
氷のリングで背の低いドワーフが、3人のドワーフを相手に、
氷をうまく滑りながら戦っていた。
テ「あ〜アイツラ。」
拳闘をやっているのは、あの時と同じドワーフ。
戦っているドワーフがティーエの声に気付く。
足を滑らし、相手の男の強烈な一撃を右頬にもらう。
ロープまで滑るも、何事もなかったように反動を利用して、相手に一撃を返し、リングに沈める。
ア「あのひと・・・強くなってるよ。」
テ「え?」
残ったふたりを沈め、アルスに近寄るあの時のセコンド。
「いやあ、お懐かしゅうございます。
まさかあの時のエルフのお嬢さんたちが、ロトの子孫のパーティだったなんて。」
リング上で頭を下げる、小柄なドワーフ。
テ「あんた達まだ、インチキ試合やってんの?」
「いえ、滅相もございません。
私達も少しでも真面目に生きていかなくてはと思い直しまして。
勇者様たちのおかげです。
相棒もほんとに強くなりました。
賞品もこれこの通り、苦労して手に入れた本物の炎の剣でございます。」
刀身の燃える剣を差し出される。
ア「・・・うん。本物みたいだ。」
テ「ちょっとはまともになったみたいね。
ところでなんでこんな所に温泉が沸いてるの?」
「へっ?それは、ここはあなた方の賢者様の塔があった跡で、
精霊ルビス様のご加護をいただいて、草木の芽の息吹きと、温泉の沸く土地に変わったのではないですか?」
ア「ポロン?」
テ「賢者はやめたって言ってたのに。」
「今はご一緒ではないので?」
テ「うん。」
「そうですか、今は取り合えず平和な時代ですものね。
こちらへはなんの御用で?」
ア「女神さまが住む泉があるとかで・・・」
テ「武器の新調と、花嫁探しよ。」
ア「違うよ。」
「? 女神オルレラ様の泉でしたら、ここのちょっと北にございます。
今でもおられるかどうかはわかりませんが。」
テ「そう・・・どうもありがと。」
「ところでこの炎の剣がお必要なら、タダでお持ちくださってもかまわないのですが、
アイツのために、ひとつ戦ってみてはもらえませんかな。」
リングのドワーフがもう一度頭を下げる。
テ「ほ、ほーん。
アルスに挑戦状とは良い心がけね。
アルスッ、いっちょ揉んであげなさいよ。」
右拳を宙に振り回して、オーバーリアクションをする。
ア「僕は・・・」