「すごいじゃな〜い。アルス。
魔物の大群も、たったひとりでけちらしちゃって。
さすがは異魔神を倒した勇者さまねー。
仲間なんていなくても、もうかなう魔物は地上にはいないわね。」
「ああ。」
焚き火に枯れ木を放り込みながら、ティーエに相槌をうつ。
「でも、何年も前に何万頭ものモンスターとも一人で戦ったんですもの。
それも当然か。」
「そんなことないよ。
世界は広いから、どんな魔物がいるかわからない。
それに、命がけの戦いに絶対なんてないよ。」
「う〜ん。言うことも油断がなくて謙虚で、やっぱりアルスが地上最強ね。」
ティーエの言葉に少し笑顔を見せるアルス。
「でも・・・」
アルスの顔に近づいて心配そうな声をだす。
「最近のアルスは自分から、危険な場所を選んで探してる気がして・・・なんだか怖いわ。」
「それは・・・」
アルスの顔を真正面から見つめるティーエ。
「僕らが異魔神を倒して、平和になったはずの世の中でも、
まだ魔物が生きていて、なかには人間を襲っているモノもいる。
普通の人には脅威でも、僕らには修行で鍛えた力があるから、
少しでもこの力をみんなの平和の為に使うのが、僕の残った使命だと思うんだ。」
焚き火の炎に照らされたアルスの顔はいつものように真剣だった。
「そうよね。
アルスとタイターンの針を装備した私に勝てるモンスターなんていないもんね。
ラゴンヌでもソードイドでもかかってきなさいってもんよね。
がっはっはっはー。」
高笑いするティーエ。
「さて、もう寝ようか。
明日のうちには、商人の町に着かなくちゃならないし。」
「ロトの勇者に同行した商人が興したっていう伝説の町ね。」
「うん。」
「どんな珍しいアイテムが売られてるのかしら・・・楽しみね。」
「それじゃ・・・」
「あ、私はちょっと夜露をごちそうになってくるから。」
「うん。気をつけて。」
「まっかせなさーい。」
闇の中へと消えていくティーエ。
夜の野原で月明かりに照らされた花に語りかけるティーエ。
「ほんとはね・・・ちょっと心配なんだ。
今のアルスはなんだか寂しそうで。
それなのに、一緒に戦ったみんなのこともなんだか、避けてるみたいで・・・」
野原に咲く花に、胸の内を打ち明けるティーエ。
白い花はそよそよと夜風に吹かれて、妖精の話を聞いていた。