食事を終えて

アルスはちょっと見て回りたいからと言って行ってしまった。

塔の部屋の庭に寝転がって食休みする残されたふたり。

ポ「なあ、ティーエ。」

テ「ん?」

ポ「アルスのやつどうなんだ?

  まだなんか考えてんのか?」

テ「アルスは・・・」

アルスのいつもの寂しげな顔が浮かぶ。

テ「これからどうしたらいいのか迷ってるみたい。

  異魔神を倒しても、アルスが思ってたような世界にはならなかったし、

  自分の強さを何に使ったらいいのかわからないみたい。」

ポ「そっか・・・

  世の中の根本的な平和は、勇者じゃなくて、自分達の力でやるもんだ。

  そこから先はロトの子孫の出番じゃねえよ。

  後は人間を信じて、アルスはアルスの幸せを見つけりゃ、それでいいんだ。」

つまんだ地面の草の入った拳を握る。

テ「うん・・・アルスもなんとなくそれに気付いて、今はいいひとを探してるの。」

ポ「いいひとって・・・」

テ「恋人よ。」

ポ「ほ、ほ、ほ〜ん。そりゃあいいことだ。」

テ「なによ、その変な顔は・・・」

ポ「いやあ喜んでんだぜ。

  アルスはモテルくせに自分で気付いてねえからもったいねえなあって。」

テ「そうね・・・」

ポ「なんだか寂しそうだな。」

テ「アルスのこと?」

ポ「いや、ティーエがなんとなく・・・」

テ「・・・あたしはアルスの幸せがあたしの幸せなのよ。」

ポ「そんなに思ってるならティーエも立候補すればいいじゃないか。」

ひじをついて鼻くそをほじりながら喋るポロン。

テ「あたし?あたしは・・・アルスの古い仲間でお目付け役で友達ですもの・・・

  そんなこと・・・」

ポ「ふ〜ん。」

テ「アルスには自分の家族が必要なのよ。

  ルナフレアみたいな、優しい奥さんがいて、かわいい子供がいて・・・

  それに小さな妖精のあたしとじゃ、そんな家庭はもてないわ。」

ポ「子供のいない夫婦だってたくさんいるけどな。」

テ「アルスはロトの子孫ですもの。

  子孫を残して、血を伝えていかなくちゃ。」

ポ「そんなことまで考えてるのか?ティーエ。」

テ「・・・・・・・・・うん。」

ちょっと考えるポロン。

ポ「本当にそれだけが問題なら俺がなんとかしてやるぜ。」

テ「なんとかって?」

ふふんと得意そうな顔をする。

ポ「俺は賢王だぜ。

  魔法でなんとでもなるさ。」

テ「やめちゃったんじゃないの?」

ポ「ふっふっふっふ。」

軽く自分の額を指でひと撫でする。

第三の目が現れる。

ポ「賢王ふっかーつ。」

あきれるティーエ。

ポ「ある時は知性あふれる賢王、そして。」

もう一度額をこする。

ポ「ある時は優しく愛に溢れたモンスター使い。」

テ「相変わらず軽く生きてるのね。」

ポ「人生は楽しまなくちゃな。」

笑うふたり。

「んん。」

軽く咳払いするティーエ。

テ「・・・それで・・・さっきの話はほんと?」

ポ「ああ、アルスの血統をティーエの血統と混ぜ合わせて、

  小さな子供を作って、それを大きくする魔法で育てれば・・・」

テ「混ぜ合わせて・・・大きくって・・・」

ポ「もう何人でも好きなだけ、魔法力で、大きく強くたくましく育てて

アルスとティーエのロトの子孫の集団を・・・」

そっぽを向くティーエ。

ポ「あれ?どうしたんだ。」

振り向いたティーエの鉄拳が飛んでくる。

テ「デリカシーがなーーい!!」

バキッ

ポ「ぐふっ。」




     


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