ア「しっ」

喜び騒ぐシフォンとプロキスを見守りながら、アルスは神経を尖らせていた。

プ「なんですか?」

ア「魔物の気配が」

しあわせの靴をふくろにしっかりしまってから、シフォンも気を探る。

シ「本当。しかも、大勢」

魔物の気配は部屋の入り口のすぐそこまできていた。

部屋は充分に広く開けていて、一戦交えるくらいの広さはありそうだ。

入り口もそれなりに開いていて、何体かは同時に飛び込んでこれそうだ。

ア「きた」

アルスがそうつぶやいた時、キラキラと輝くモンスターが数体アルスたちの部屋に飛び込んできた。

キキッ

シ「キメラ?」

飛び込んできたキメラそっくりの魔物はこごえるほどの吹雪をふきつけてきた。

プ「わっ、このお」

カキィン

プロキスの振るったドラゴンスレイヤーが弾かれる。

シ「硬い?」

メタリック色のメタルキメラは部屋中を冷気に染める。

ホイミンがベホマラーでなんとかダメージを和らげる。

シフォンも賢者の石で回復に回る。

そうこうしている間に、次のモンスターが入ってきた。

金色に輝く石像。

アルスが王者の剣を切り下ろすも、それでも倒れない。

そして自身も強い一撃を放ってきた。

プ「くっ」

プロキスはキメラの相手で精一杯で、なんとか一匹を撃ち落したところだった。

ホイミンとシフォンは回復に回っている。

次には赤いローブを纏った魔導師が3体姿を現した。

イオナズンの轟音が部屋中に響き渡る。

シ「このお」

シフォンが波動拳で一匹を吹き飛ばす間にも次々とモンスターが侵入してきた。

黒いトロルや、空を飛ぶ神々しい魔物、骸骨の騎士。

部屋は、天界の上位モンスターでいっぱいになっていた。

呪文や吹雪が乱れ飛ぶ中、モンスターも回復呪文を使い、倒したモンスターまで蘇ってきて、部屋はお互いの上級の技のオンパレードとなっていた。

プ「ダメだ。倒しても倒してもキリがねえ。部屋の入り口をふせがなくっちゃ」

シ「ダメよ。もう目一杯はいってきてるもの」

モンスターの屍をいくら積み上げても、新手が押し寄せてきていた。

しかも屍すら、復活してくるのだ。

テ(全滅? 竜の神様にもまだ会ってないのに?)

離れてしまったアルスを見ると、アルスですら、息をつく暇もなくその剣を振るっているようだった。

テ(ここまでなの? でも、まだ・・・)

ア「皆 伏せろっ」

アルスは右手を掲げて呪文の構えをとった。

プ(アルス様が呪文?)

シ(今まで使わなかったのに・・・)

テ(・・・アルスが攻撃呪文を使うのは何年ぶりかしら)

アルスはマジックパワーを集めて自身の呪文を唱えた。

「ライ、ディイイーンン」

すさまじい雷が部屋中を走る。

閃光が黒と白に何度も瞬いて何も見えなくなった。

稲光はいつまでも休みなく轟いて、何体ものモンスターの叫び声が狭い部屋中に響き渡った。

 

稲妻の落ちた跡には、焦げ付いたモンスターの死体の山ができていた。

シ「すごいです、アルス様」

熱い視線を送るシフォン。

プ「あれが中級呪文? あれで? あの威力で?」

勇者の呪文にレベル差を感じるプロキス。

テ(アルスのライデインはとっくの昔からライデインじゃなくなってるもの・・・とっくの昔から・・・)

アルスは呪文を放った自分の右手を握り締めていた。




     


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