ふしゅるるる

 鼻息荒い銀のドラゴンは、敵を確認すると、灼熱のブレスをはきつけた。

 冷気で相対するしんりゅう。

 

ア「今のうちに」

アルスはまた呪文の構えをとった。

「今しかないんだ。今使えなきゃ、意味がないんだ」

あんまり得意でない呪文。唱えたことのないその呪文。

「ベホマ・ズン」

全員の体力が回復した。

テ(また新しい力に目覚めたのね……アルス)

ア「できた」

  右拳を握るアルス。

 

 巨大な2匹のドラゴンは、空中でその巨体を躍らせていた。

し(本体ではなく、その魂か、一部だけが封印されていたらしいな)

 しんりゅうは相手をその眼でにらみつけると。凍てつく波動を放ってきた。

 もとの小さな竜の置物になって地面に落ちる天空の竜。

 

「ああ、負けちゃった」

「ふん」

 見下ろすドラゴンの後ろに、アルスの姿が現れた。

「はあっ」

 竜の背骨に、輝く剣を突き立てる。

 ティーエが見ると、シフォンをカタパルトに飛び上がったようだ。

「おかげで、ようやく隙ができた。ありがとうティーエ。これで……トドメだーーーーっ」

 アルスは、左手に王者の剣を強く握ったまま、右手の人差し指を天にかざした。

「皆の魔法力よ。我、アルスの呼びかけの元に……」

 プロキスや、ホイミンのマジックパワーを根こそぎかき集めるアルス。

「ミナデイーン!!」

 しんりゅうとアルスの全身に、巨大な落雷が耳を裂く程の轟音と共に落ちる。

「4人しかいないのに……」

 たった4人のパーティなのに、電撃は「あの時」以上に強力だった。

 

 もんどりうって、アルスと共に地上に墜落するドラゴン。

「プロキスっ!」

「はいっ」

 待ち構えていたバイキルトがけの戦士が、愛用のドラゴンスレイヤーで切りつける。

「ドラゴン斬りっっ!!!」

 しんりゅうの首が、長い胴体から切り落とされて、空を舞った。




     


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